FAQ-782 エラーバーが大きく変更されたときにパラメータの標準誤差が変わらないのはなぜですか?

最終更新: 2018/08/08

フィットパラメータの標準誤差(SE)および関連結果もついて、他のソフトウェアと互換性を保つために、sqrt(補正カイ2乗値)のスケールエラーのボックスにデフォルトでチェックが入っています。このチェックボックスをオンにすると、エラーバーが大きく変更されても、パラメータのSEは変わりません。機械的、任意データセットあるいは直接重み付けでデータをフィットする場合は、パラメータの標準誤差が重みに影響するため、このオプションのチェックを外して無効にすることをお勧めします。

sqrt(補正カイ2乗値)のスケールエラーオプションは、

Note:

このチェックボックスは、フィットしたパラメータのSEにのみ影響します。フィッティング処理やパラメータ値には全く影響しません。

簡単な理論の説明

以下では、j番目のフィットパラメータのSEが、sqrt(補正カイ2乗値)のスケールエラーのチェックの有無によってどのように変化するかを議論します。簡略化のため、エラーバー\sigma_{yi}は定数kを掛けたものであると仮定します。より詳細なアルゴリズムと解説については、非線形曲線フィットの理論を参照してください。

デフォルトでは、sqrt(補正カイ2乗値)のスケールエラーが有効のとき、パラメータ\hat \thetaの分散 - 共分散行列CF'F\sigma^2に依存します。

C=(F'F)^{-1}\sigma^2

(1)

ここで、Fは、i行とj列の編微分の行列です。

F_{ij}=\frac{\partial f(X, \boldsymbol{\theta})}{\sigma _{yi}\partial \theta _j}

(2)

そして、\sigma^2は平均残留分散であり、これは補正カイ二乗によって推定されます。

\sigma^2 = \sum_{i=1}^n \frac{1}{{\sigma_{yi}}^2} \left[Y_i-f(X, \boldsymbol{\theta}) \right ]^2/df_{Error}

(3)

\theta_jのSEは、行列の主対角値の平方根Cです。

\sigma_{\theta_j}=\sqrt{c_{jj}}\,\!

(4)

エラーバー\sigma_{yi}は、kの因子により変わる場合、F'Fsigma^2の両方は因子1/k^2によって変わり、kはSEの計算を打ち消します。したがって、エラーバーがスケールされたときに、SEは変わりません。

sqrt(補正カイ2乗値)のスケールエラーがチェックされていない場合は、 \sigma_{yi}は分散 - 共分散行列を計算する際に除外されることを意味し、行列C(F'F)^{-1}のみに依存します。

C=(F'F)^{-1}

(5)

SEはこのようになります

\sigma'_{\theta_j}=\frac{\sigma_{\theta_j}}{\sigma}

(6)

エラーバーにkを掛けた場合、 SEもk倍になります。

モデルをフィットした後、補正カイ二乗値を使って、重みが真のYエラーを表現しているかどうかを確認できます。sqrt(補正カイ二乗値)のスケールエラーオプションにチェックを入れた時と外した時とで、パラメータの標準誤差が大きく異なる場合は、重みは真のYエラーを表現していません。詳細は、このページ をご覧下さい。

クイックサンプル

以下の簡単なサンプルで、sqrt(補正カイ二乗値)のスケールエラーがフィットパラメータのSEにのみ影響を与えることを確認します。

  1. このデータをコピーしてワークシートに貼り付けます。
  2. 列Cで右クリックして、列XY属性の設定:Yエラーバーエラーを選択します。
  3. ワークシートのすべての列を選択し、解析:フィット:非線形曲線フィットを選択して、ダイアログを開きます。
  4. 関数ドロップダウンリストから、Gaussを選択します。詳細タブを選択して、フィット制御のブランチを開きます。sqrt(補正カイ二乗値)のスケールエラーにチェックが付いていることを確認します。
    Scale Error with sqrt 001.png
    フィットをクリックして、パラメータ値とSEが含まれるフィットレポートを作成します。
    Scale Error with sqrt 002.png
  5. 緑の鍵のアイコンをクリックして、パラメータを変更を選択します。 NLFitダイアログが開いたら、sqrt(補正カイ二乗値)のスケールエラーのチェックを外します。
    Scale Error with sqrt 003.png
    フィットボタンをクリックします。パラメータのSEは変化しましたが、フィット値は変化していません。
    Scale Error with sqrt 004.png
  6. 今度はエラーをスケーリングして、sqrt(補正カイ二乗値)のスケールエラーのチェックの有無がSEにどのような影響があるかを見てみましょう。パラメータを変更からNLFitダイアログを開きます。sqrt(補正カイ二乗値)のスケールエラーのチェックを付けフィットを実行してから、鍵のアイコンのメニューから再計算モード:自動に変更します。
  7. エラー列Cを10倍します。レポートシートが自動で更新されます。パラメータのSEは、操作4で得られた結果と同じことがわかります。
    Scale Error with sqrt 005.png
  8. パラメータを変更から、再度NLFitダイアログを開きます。sqrt(補正カイ二乗値)のスケールエラーのチェックを外します。フィットボタンをクリックします。操作5で得られたSEの10倍の値が得られます。
    Scale Error with sqrt 006.png
サンプルデータ
X Y Y Error
11 5 0.4472
13 10 0.6324
15 19 0.8718
17 27 1.0392
19 49 1.4
21 65 1.6124
23 77 1.755
25 80 1.7888
27 77 1.755
29 59 1.5362
31 44 1.3266
33 24 0.9798
35 11 0.6634
37 14 0.7484
39 4 0.4

キーワード:フィット、標準誤差、補正カイ二乗値、誤差分散