立上がり時間ROIツール (Proのみ)立上がり時間ROIツール
立ち上がり時間ガジェットは、ステップ状の信号の上昇または下降の時間を分析するのに使用できます。このツールは、四角形オブジェクトで直感的にグラフの領域を選択し、その領域の上昇または下降の時間を計算できます。

立上がり時間ガジェットを使うには
このツールを使うには、信号を含むグラフをアクティブにし、Originメニューから、ガジェット:立上がり時間ROIツールを選びます。
説明
立ち上がり時間(または下降時間)は、指定した低状態レベルから指定した高状態レベル(または指定した高状態レベルから指定した低状態レベル)に信号が変化するのに必要な時間を参照します。通常、これらの値は、ステップ高さの10%と90%です。この関数を使って、グラフに追加された四角形で直感的にグラフの領域を選択し、領域内の立ち上がり時間または下降時間を計算することができます。
ステップ状の信号で、低状態レベルと高状態レベルが計算されます。そして、ステップ高は、高状態レベルから低状態レベルを引くことで計算することができます。そして、低参照レベルと高参照レベルは、ステップ高の2つの指定したパーセントで計算されます。最後に、立ち上がり時間(または下降時間)の区間に位置付け、信号が低参照レベルから高参照レベルに立ち上がる(または高参照レベルから低参照レベルに下降する)のに必要な時間を計算します。 これらのパラメータ間の関係は、下図の通りです。

ダイアログ設定
ROIボックスタブ
Xスケール
|
ROIのXデータ範囲を指定します。
- 開始
- Xスケールの開始値を指定します。
- 終了
- Xスケールの終了値を指定します。
- 固定(ROIによる変動を防止)
- X目盛りを固定してROIボックスによって動くのを防ぎます。
|
ツール名を表示する
|
ROIオブジェクトの名前を表示するかどうかを指定します。このチェックがついていると、表示するツール名を指定できるテキストボックスが表示されます。
|
塗り色
|
ROIオブジェクトの塗り色を指定します。
|
ツール
|
立ち上がり時間または下降時間のどちらを計算するかを指定します。以下のオプションがあります。
- 立上がり時間
- 立ち上がり時間の分析が適用されます。ツールは、信号が低参照レベルから高参照レベルに立ち上がるのに必要な時間を計算します。
- 下降時間
- 下降時間の分析が適用されます。ツールは、信号が高参照レベルから低参照レベルに下降するのに必要な時間を計算します。
|
手法
|
立ち上がり時間または下降時間の区間に使用される方法を指定します。高状態レベルと低状態レベルの両方が手動で設定されている場合には利用できません。以下のオプションがあります。
- 線形探索法を使って、立ち上がり時間または下降時間の分析を行います。 詳細については、以下のアルゴリズムセクションを参照してください。
- ヒストグラム法を使って、立ち上がり時間または下降時間の分析を行います。詳細については、以下のアルゴリズムセクションを参照してください。
- 最大三角形法を使って、立ち上がり時間または下降時間の分析を行います。詳細については、以下のアルゴリズムセクションを参照してください。この手法が選択されているとき、高状態レベル と 低状態レベル は手動では設定できません。
|
立上がり範囲
高状態レベル
|
高状態レベルを指定します。自動チェックボックスにチェックが付いている場合、この値は指定した手法で計算され、チェックが付いていない場合、値を手動で指定できます。 もし方法で最大の三角形を選択すると、この値はGUIの中では非表示になり、値は自動的に計算されます。
|
低状態レベル
|
低状態レベルを指定します。自動チェックボックスにチェックが付いている場合、この値は指定した手法で計算され、チェックが付いていない場合、値を手動で指定できます。もし方法で最大の三角形を選択すると、この値はGUIの中では非表示になり、値は自動的に計算されます。
|
開始 (ステップ高の%)
|
値nを指定します。低参照レベルがステップ高のn%となります。デフォルトの設定は10です。
|
終了 (ステップ高の%)
|
値mを指定します。高参照レベルがステップ高のn%となります。デフォルトの設定は90です。
|
値
データセット識別子(名前)
|
ドロップダウンリストからデータセット識別子を指定します。
|
低状態レベル(VMin)
|
低状態レベルを出力するかどうかを指定します。
|
高状態レベル(VMax)
|
高状態レベルを出力するかどうかを指定します。
|
低参照レベル(VrefMin)
|
低参照レベルを出力するかどうかを指定します。
|
高参照レベル(VrefMax)
|
高参照レベルを出力するかどうかを指定します。
|
立ち上がり範囲(dVref)/下降範囲(dVref)
|
立ち上がり範囲/下降範囲を出力するかどうかを指定します。ROIボックスタブのツールドロップダウンリストで、立ち上がり時間が選択されている場合、このラベルは立ち上がり範囲(dVref)となり、下降時間が選択されている場合は、下降範囲(dVref)となります。
|
低参照レベルの時間(T1)
|
低参照レベルの時間を出力するかどうかを指定します。
|
高参照レベルの時間(T2)
|
高参照レベルの時間を出力するかどうかを指定します。
|
立ち上がり時間(dT)/下降時間(dT)
|
立ち上がり時間/下降時間を出力するかどうかを指定します。ROIボックスタブのツールドロップダウンリストで、立ち上がり時間が選択されている場合、このラベルは立ち上がり時間(dT)となり、下降時間が選択されている場合は、下降時間(dT)となります。
|
立ち上がり/降下速度 (Velocity)
|
立上がり/下降に関する速度を出力するか指定します。計算式はスムージングされたデータを元にdVref/dTとなります。
|
最大立ち上がり/降下速度 (最大速度)
|
最大立上がり/下降速度を出力するか指定します。これはT1とT2の間の最大微分値を示します。 最大速度はスムージングされたデータに基づき計算されます。
|
低ノイズレベル(e1)
|
低レベルの基線領域でのノイズレベルを出力するかどうか指定します。
|
高ノイズレベル(e2)
|
高レベルの基線領域でのノイズレベルを出力するかどうか指定します。
|
出力先
スクリプトウィンドウ
|
スクリプトウィンドウに結果を出力します。
|
結果ログ
|
結果ログに結果を出力します。
|
ワークシートに追加
|
ワークシートに出力結果を追加します。
|
結果のワークシート名
|
これは、ワークシートに追加が選択されたときのみ利用できます。出力シートを指定するために使用されます。
- 結果ワークシート名の右側にあるフライアウトボタン
をクリックして、入力ブック内のシートを選択します。これにより、編集ボックスには[<input>]Resultが入力されます。新しい出力(O)を選択すると、結果は、元データのワークシートResultに出力されます。
- 編集ボックスに、[BookName]SheetName の形式でブックとシート名を入力することもできます。この場合も、新しい出力(O)を選択すると、指定したワークブックのシートに結果が出力します。指定したブックやシートがない場合、作成します。
|
グラフ上の表示
インジケータ
|
指標のスタイルをカスタム化します。
- サイズ
- 指標のサイズをポイント単位で示します。デフォルトの設定は10です。
- シンボル
- インジケータのシンボルを選択します。
- 縁の色
- 低/高参照レベルを示すインジケータの縁の色を指定します。
- 塗り色
- 低/高参照レベルを示すインジケータの塗り色を指定します。
|
状態レベル
|
低/高状態レベルを作成する2つの水平線を表示するかどうかを指定します。
|
立ち上がり時間/下降時間
|
立ち上がり時間/下降時間を作成する時の目印となる2つの垂直線(インジケータ)を表示するかどうかを指定します。ROIボックスタブのツールドロップダウンリストで、立ち上がり時間が選択されている場合、このラベルは立ち上がり時間となり、下降時間が選択されている場合は、下降時間となります。
|
立ち上がり範囲/下降範囲
|
立ち上がり範囲/下降範囲を作成する時の目印となる2つの水平線を表示するかどうかを指定します。 ROIボックスタブのツールドロップダウンリストで、立ち上がり時間が選択されている場合、このサブツリーのラベルは立ち上がり範囲となり、下降時間が選択されている場合は、下降範囲となります。
|
詳細
低水準決定
|
方法が線形探索にセットされている場合のみ利用できます。どの様に低水準レベルを探すか指定します。
|
高水準決定
|
方法が線形探索にセットされている場合のみ利用できます。どの様に高水準レベルを探すか指定します。
|
スムーズポイント数
|
方法が線形探索にセットされている場合のみ利用できます。立ち上がり時間/下降時間の分析を実行する前にデータセット全体に実行されるスムージングで使われるポイント数を指定するのに使われます。この値は1から200までの整数値です。デフォルトは50に設定されています。
|
立ち上がり/下降領域でのスムーズポイント数
|
立ち上がり領域/下降領域に適用されるスムージングで使われるポイント数を指定します。この値は1から50までの整数値です。デフォルトの設定は1です。
|
許容値(パーセント)
|
レベル値のしきい許容値を指定します。 この値より小さい値は、ノイズとして扱われます。方法が線形探索またはヒストグラムにセットされている場合のみ利用できます。 デフォルトの設定は0.03です。
|
ビンの数
|
手法がヒストグラムにセットされている場合のみ利用できます。 ヒストグラム法で使用されるビンの数を指定します。 デフォルトの設定は256です。
|
グラフのスケールの変化時
|
グラフスケールが変わったときに実行さする操作を指定します。以下のオプションがあります。
- 結果の更新
- グラフスケールが変わったとき、結果を更新します。
- 結果を無効にする
- グラフスケールが変わったとき、結果を無効にします。結果が無効になると、グラフ上に十字が表示されます。
|
ノイズレベル単位
|
ノイズレベルの単位を指定します。以下のオプションがあります。
- 絶対値
- ノイズレベルは絶対値となります。
- ステップサイズに対する相対値
- ノイズレベルはステップ高さのパーセントとなります。
|
フライアウトメニュー
ROIボックスの右上角にある三角形のボタン をクリックして、フライアウトメニューを開きます。
新しい出力
|
指定したワークシートに結果を出力します(空欄でない場合、結果を追加します)。
|
すべての曲線で出力(N)
|
現在のレイヤ内にある全ての曲線の結果を、指定したワークシートに出力します(空でない場合、結果を追加します)。
|
すべてのレイヤで出力(L)
|
現在のグラフ内にある全レイヤの全ての曲線の結果を、指定したワークシートに出力します(空でない場合、結果を追加します)。
|
レポートシートに行く
|
もし出力されているならば、レポートワークシートをアクティブにします。
|
クリップボードに出力
|
選択すると(メニューの項目にチェックが入っている)、新しい出力がクリップボードに出力されます。
|
データ変更
|
元データセットを変更します。これは複数の曲線が現在のグラフレイヤ内ある場合のみ適用されます。
- 任意のプロットをクリックして選択します。
- 選択...または、詳細...をクリックするとプロットを選択ブラウザが開きます。
- デフォルトでは、フライアウトメニューで自動モードチェックが入っています。つまり、ターゲットとなるデータ・プロットはグラフのROIボックス外のハイライトされたデータ・プロットに従います。Origin 2019以前のバージョンでは、自動モードはありません。ターゲットプロット/データを変更するには、フライアウトリストまたはプロットを選択ダイアログから選択する必要があります。
|
プロット群の最大範囲に拡大する
|
全プロット範囲にROIボックスを拡大します。
|
ROI位置の固定
|
ROIボックスの位置を固定して、移動できなくします。
|
テーマに名前を付けて保存
|
ダイアログ設定にテーマを保存します。
|
<デフォルト>として保存
|
現在のダイアログの設定をデフォルトのテーマとして保存します。
|
テーマのロード
|
既存のテーマをロードして、ダイアログ設定に適用します。
|
設定...
|
メニューのガジェット:クイックピークで開くガジェットと似た、クイックピーク設定が開きます。
|
サンプル
次のステップは、グラフにあるステップ状信号の立ち上がり時間を計算するものです。
- 新しいプロジェクトを作成し、ファイル<Originフォルダ>\Samples\Signal Processing\Step Signal with Random Noise.datをインポートします。

- 列Bを選択し、2Dグラフギャラリーツールバーで折れ線グラフボタンをクリックし、グラフを作成します。
- プロット操作・オブジェクト作成ツールバーのスケール拡大ボタンをクリックし、グラフ上の700から800の時間範囲を拡大します。

- グラフがアクティブである事を確認し、Originメニューからガジェット:立上がり時間ROIツールを選択(または、コマンドウィンドウでスクリプト
addtool_rise_time -d; を実行)し、このXファンクションのダイアログボックスを開きます。
- ROIボックスタブでは塗り色を緑、ツールでは立上がり時間を選択し、方法のドロップダウンではヒストグラムを選択します。 出力先タブで、結果ログにだけチェックを付けます。他のタブの内容はデフォルトのままにします。

- OKボタンをクリックします。 緑の四角形がグラフに追加されます。四角形を水平に移動し、信号のステップが四角形の中に収まるようにします。(Note:次のスクリーンショットと完全に同じようにROIボックスを配置できていない場合、結果が異なる可能性もあります。)

- 四角形の右上角にある
ボタンをクリックします。コンテキストメニューから新しい出力を選択します。結果が結果ログに出力されます。(Note:繰返しになりますが上記スクリーンショットと完全に同じようにROIボックスを配置できていない場合、結果が異なる可能性もあります。)

アルゴリズム
この関数は、立ち上がり/下降時間を計算する3つの手法を提供しています。線形探索とヒストグラムの2つです。
線形探索
この例題として、立上がり時間を説明します。 ステップ高さのdTol1%からステップ高さのdTol2%まで信号が立ち上がる時間を計算します。(ここで 0<dTol1<dTol2<100です。)
ステップ:
- 隣接平均法によるスムージングが元のデータに適用されます。
- 高状態レベルと低状態レベルに位置づけます。低/高状態レベルを探す2つの方法が紹介されています。最初では高状態レベルと低状態レベルは最初の1%ぐらいのデータポイントと最後の1%ぐらいのデータポイントの平均でそれぞれ算出されます(GUIの詳細タブでは、低水準決定/高水準決定で平均を設定します)。2つ目の方法は隣り合った値の平均が取れたところで、最小と最大がそれぞれ低水準と高水準として認識されます(GUIの詳細タブでは、低水準決定/高水準決定で最大平均を設定します)。
- 線形探索が実行され、次のように左から右へ2つのポイントt1 および t2を見つけます。

- ここで、上面は高状態レベルで、下面は低状態レベルです。
そして、t1とt2の間の領域が立ち上がり領域で、 となります。
ヒストグラムで描画
この手法が使われるとき、状態レベルのヒストグラムがデータから作成されます。このヒストグラムの限界値は、データセットの最小値と最大値でセットされ、ビン数はデフォルトで256となります。そして、各ビンに入るデータ標本の数が数えられます。次の図は、ヒストグラムのサンプルです。このグラフから下側40%のビンの中に入る最大数を持つビン(グラフの下側ビン)の平均値が低状態レベルとして計算されます。同じ計算でビンの上部40%が高状態レベルを計算するのに使用されます。

低状態レベルと高状態レベルの位置をヒストグラムで決めた後、線形探索のステップ3方法で、立ち上がり時間または下降時間を計算します。
最大の三角形
下図に記されている通り、開始点と終了点を通る線が構築されます。この線は基線(ベースライン)と呼ばれています。基線の上部左側のポイントが検索されます。点とベースラインによって構築された三角形が最大の領域を持つとき、この点の垂直な座標は高状態レベルとなります。 基線の反対側でも同じようにポイントが検索され、低状態レベルを検索されます。

低状態レベルと高状態レベルの位置を決めた後、線形探索のステップ3方法で、立ち上がり時間または下降時間を計算します。
|